これは、現代社会で私たちが飲み込まざるを得ない、少し苦い現実のひとつかもしれません。
かつての私たちは、遊び、探検し、「ただ子どもであること」を楽しんでいました。
でも、いつの間にかスクリーンが最も身近な存在となり、「親友」「子守」「セラピスト」のような役割を担うようになってしまいました。
もちろん、バランスを取ろうと努力してきたつもりです。
でも正直、かつて当たり前だった“健やかな習慣”は、今やどこかへ消えてしまったような感覚もあります。
大きな変化ではないかもしれません。
ふとした瞬間に、子どもがおもちゃではなくタブレットに手を伸ばすのを見て、「何か大切なものを失ったのでは…」と胸がチクリと痛む、そんな感覚に近いかもしれません。
今回は、スクリーンとデジタルが日常となった今、私たちがいつの間にか失ってしまった子ども時代の健やかな習慣を8つ、振り返ってみたいと思います。
1)退屈をそのまま楽しむこと
忘れてしまいがちな大切な感覚、それが「退屈を受け入れる力」。
昔の私たちは、何もせず、空をぼーっと眺めたり、草の上に寝転がったりしながら、
心のままに空想を広げていました。
でも今は、ほんの少しの暇さえも許されず、手は自然とスマホやタブレットへ。
けれど、退屈は創造性の母です。
何もない時間こそが、子どもの“考える力”や“ひらめき”を育ててくれます。
「暇だから画面を見る」のではなく、「暇って案外楽しいかも」を思い出させてあげたいですね。
2)自然とのふれあい
私自身、自然が大好きです。それは子ども時代の体験から来ていると思います。
木に登ったり、草の中を駆け回ったり、泥だらけになりながら虫を探したり…。
空を見上げて雲の形を想像する、それだけで一日が過ぎたこともありました。
今の子どもたちが見上げているのは「クラウド(雲)」の保存フォルダかもしれません。
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でも、木の枝で秘密基地をつくったあの感覚。
汗をかきながら何かを完成させたあの達成感。
もし、ほんの少しでも自然にふれるチャンスをあげられたなら、
彼らもきっと、スクリーン以上に心躍る“リアルな冒険”を見つけられるはずです。
3)“待つ”という経験
アインシュタインは言いました。
「私は特別な才能など持っていない。ただ、情熱的に好奇心を持っているだけだ」と。
この“好奇心”は、かつては「待つこと」の中から育っていました。
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ゲームの順番を待つ、好きなテレビ番組の放送時間を待つ、写真の現像を待つ…。
何かを得るには“待つ”ことが必要でした。
でも今は、ボタンひとつでなんでも手に入る時代。
待たなくても済むことが増えた一方で、忍耐力は失われつつあります。
「今すぐじゃなくてもいいこともある」
そんな価値観を、もう一度思い出させてあげたいですね。
4)体を動かす遊び
昔は、膝にできたすり傷が“勲章”のようでした。
走って、跳んで、転んで、また走って——
身体をめいっぱい使って遊ぶことが、心と体の健やかな成長につながっていたのです。
世界保健機関(WHO)は、5歳~17歳の子どもに「1日60分以上の中〜高強度の運動」を推奨しています。
でも今は、自由時間の多くが画面の前。
外遊びはどんどん減少し、体を動かす機会が減っています。
体を動かすことは、体力だけでなく、脳の発達や感情のコントロールにも大切な役割を果たしています。
スクリーンタイムを「グリーンタイム(自然や運動)」に変えるだけで、子どもは大きく変わります。
5)対面での社会性を育てること
昔は、遊びの中で自然とコミュニケーション能力を身につけていました。
公園でのケンカ、家族での団らん、友達とのお泊まり会…。
そこには、顔の表情、声のトーン、相手の気持ちを読み取る力が必要でした。
今は、SNSやチャットアプリでのやり取りが増え、
「人と向き合って話す力」が育ちにくくなっているとも言われています。
もちろん、デジタルコミュニケーションも大切です。
でも、リアルな場でしか学べない“空気を読む力”や“共感力”を忘れてはいけません。
たまにはスマホを置いて、じっくり向き合う会話を楽しんでみませんか?
6)芸術や文化にふれること
子どもの頃、地元の演奏会や美術展に行ってワクワクした経験、ありませんか?
その“音”“色”“空気”——画面越しでは決して味わえない体験は、
子どもの感性を育み、視野を広げてくれる貴重な時間でした。
でも今、エンタメのほとんどが画面の中で完結してしまいます。
バーチャルの便利さは素晴らしいけれど、やっぱり本物の音、香り、空間は唯一無二。
舞台を観に行く、美術館に足を運ぶ、伝統文化に触れる——
こうした経験が、子どもの心に「一生モノの感動」を残します。
7)他人の気持ちを思いやること(共感力)
子ども時代に自然と身につけていたのが、「他人の気持ちを考える力」。
誰かが泣いていれば心配になり、友達が困っていれば声をかけたくなる。
そうしたリアルな人との関わりを通じて、共感力は育まれていました。
今は、感情表現が「スタンプ」や「いいね」に置き換わり、
本当の気持ちに触れる機会が減ってきているようにも感じます。
アプリやアニメで“気持ち”を教えることはできます。
でも、それだけで心の機微を感じ取るのは難しい。
家族や友達、ペットとのふれあい、ボランティア体験など、
人と人とのつながりが、共感力を育てる一番の方法かもしれません。
8)失敗から学ぶこと
「失敗は成功のもと」とはよく言いますが、
それを実感できるのは、実際に失敗した経験があってこそです。
転んで泣いて、また立ち上がる。
計算ミスして、何度もやり直す。
そうした繰り返しの中で、「粘り強さ」「工夫する力」「諦めない心」が育っていきました。
でも今のデジタル社会では、失敗は「やり直し」や「リセットボタン」で簡単に回避できます。
便利だけど、大切な“学びの機会”を失っているのかもしれません。
「失敗してもいいんだよ」
そう伝えられる大人でありたいですね。
おわりに:スクリーンの外にも、豊かな世界がある
デジタル社会の中で、かつての“健やかな習慣”は見えにくくなってきています。
でも、この記事を読みきったあなたなら、
子どもたちの未来に本当に大切なことに気づいているはずです。
これは「スクリーンを悪者にする話」ではありません。
テクノロジーは今や生活の一部。
便利で、学びもあって、時に必要不可欠です。
でも同時に、「バランス」がもっとも大切。
私たち大人が、まずはスクリーンから少し離れてみる。
そして、子どもたちと外で遊び、会話をし、一緒に笑い合う。
その積み重ねが、失われつつある「8つの健やかな習慣」を、少しずつ取り戻す道につながっていくはずです。
画面の中の世界だけじゃなく、
現実の世界の温かさと奥深さを、もう一度子どもたちに届けてあげましょう。











